すべては最初の間違いからはじまる

……我々が頑なに、そしてそれに劣らず誠実に……真実だと信じていることの大半は……当初の勘違いに端を発している。

杖を撞いた三人の青年……中年、彼らの目は鋭く私を見据える。私は遠くレストランの円盤を見ていない、滝のあふれる水の遠さを見ていない、遠い遠い白い景色、点々と跡を残す薄茶色い濁った影を見ていない。私の目は開いていない。ふっくらとしたまぶたが私の目をふさいでいる。母の優しさが私の目を煙に巻く。
しかし私は生まれた。生まれたてのベイビーだ。赤ちゃんは泣くよ。オギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャッギャーーーーーーッ!! 赤ちゃんは最初の空気を吸った。
「ねえ知ってる? 赤ちゃんは最初に吸った空気を肺の奥の方にずっと取っておくの」
ゴミが散乱する寝臭い部屋で生まれ落ちた赤ちゃんの肺には、彼の最初の一泣き(間違い)と同時に、埃まみれの空気が吸入された。しかし、その空気は彼にとっては甘いガムの香りに感じられた。彼はこれから先、ガムを噛んで顎を強くして殴られても泣かない叱られても泣かない唾吐きかけられても泣かない強い子になるんだろう。

みんな応援してあげてね。